2015-01-01から1年間の記事一覧

除夜の作

今日は大晦日です。 除夜作 高適(こうせき)旅館寒灯独不眠 旅館の寒灯 独り眠らず 客心何事転悽然 客心 何事ぞ 転(うた)た悽然故郷今夜思千里 故郷 今夜 千里を思ふ 霜鬢明朝又一年 霜鬢 明朝 又一年 旅館の寒々とした灯火の下で、独り寝つけない。旅人の心…

秋日

秋日 耿湋反照入閭巷 反照 閭巷(りょこう)に入(い)る憂来与誰語 憂ひ来たりて誰とか語らん古道無人行 古道 人 行くこと無く秋風動禾黍 秋風 禾黍(かしょ)を動かす 夕陽が小さな村里に差し込んでいる。憂いがつのってきたが、この思いを誰と語り合えばよいの…

秋風引

すっかり秋になりました。そこで秋の詩を一つ。 秋風引 劉禹錫何処秋風至 何れの処よりか秋風至り蕭蕭送雁群 蕭蕭として雁の群を送る朝来入庭樹 朝来 庭樹に入り孤客最先聞 孤客 最も先に聞く どこからともなく秋風が吹いてきて、ひゅうひゅうと音を立てて雁…

二千里外 故人の心

先日はスーパームーンでした。そこで十五夜の月を詠った詩を一つ。 八月十五日夜禁中独直対月憶元九 八月十五日夜 禁中に独り直し月に対して元九を憶ふ 白居易 銀台金闕夕沈沈 銀台 金闕 夕に沈沈たり 独宿相思在翰林 独り宿し相ひ思ひて 翰林に在り 三五夜…

槊を横たえて詩を賦す ― 詩人曹操

魏の武帝曹操は実は詩人としても傑出した人物でした。今日はその詩を紹介します。 短歌行 曹操対酒当歌 酒に対して当に歌ふべし人生幾何 人生 幾何(いくばく)ぞ譬如朝露 譬へば朝露の如く去日苦多 去る日は苦(はなは)だ多し慨当以慷 慨(がい)して当に以て慷(…

蜀相

蜀相 杜甫 丞相祠堂何処尋 丞相の祠堂 何れの処にか尋ねん 錦官城外柏森森 錦官(きんかん) 城外 柏 森森たり 映階碧草自春色 階に映ずる碧草は 自(おのずか)ら春色 隔葉黄鸝空好音 葉を隔つる黄鸝(こうり)は 空しく好音 三顧頻繁天下計 三顧 頻繁なり 天下の…

簿領の書に沈迷す

雑詩 劉楨 職事相填委 職事 相ひ填委(てんい)し 文墨紛消散 文墨 紛として消散す 馳翰未暇食 翰(ふで)を馳せて未だ食するに暇(いとま)あらず 日昃不知晏 日 昃(かたむ)くも晏(いこ)ふを知らず 沈迷簿領書 簿領(ぼりょう)の書に沈迷し 回回自昏乱…

三顧の礼―『三国志演義』

先日述べたように、「三顧の礼」については、諸葛亮自身が「出師表」で述べており、正史『三国志』にも記されていますが、具体的な状況については触れておらず、三度諸葛亮のもとを訪れたという簡潔な記述のみです。 一方、小説『三国志演義』では、諸葛亮の…

南史演義 巻2-6

さて、賊将の盧循(ろじゅん)は、孫恩に言った。「我々が海辺で兵を起こしてより、朝廷は専ら浙東の地のことばかりを気にし、強兵猛将が、ことごとくここに集まっています。都建康はきっと手薄になっているので、全力をあげて長江をさかのぼって進み、まっ…

田園楽

すっかり暖かくなってきました。 ということで春の詩を一首。 田園楽 王維 桃紅復含宿雨 桃 紅(くれない)にして 復た宿雨を含み 柳緑更帯朝煙 柳 緑にして 更に朝煙を帯ぶ 花落家童未掃 花 落ちて 家童 未だ掃(はら)はず 鶯啼山客猶眠 鶯 啼きて 山客 猶ほ眠…

三顧の礼

天下三分の計を示して劉備の信頼を得た諸葛亮ですが、この両者の出会いは三顧の礼のエピソードでよく知られています。 諸葛亮、字は孔明は、もともと琅邪郡陽都県の人でしたが、荊州に移住し、その地で自ら農耕するなど、隠者の生活を送っていました。正史『…

南史演義 巻2-5

もともと謝琰(しゃえん)には将略もなく、朝廷はその家柄と名望によって抜擢したのであった。そして着任後は、日々賓客と酒を飲んでは詩を詠い、賊がまたやって来ようとは思わず、全く備えもしていなかった。諸将が皆諫めて言った。「賊は近ごろ海辺におり…

夜雪

夜雪 白居易 已訝衾枕冷 已に訝(いぶか)る 衾枕(きんちん)の冷やかなるを 復見窓戸明 復た見る 窓戸の明らかなるを 夜深知雪重 夜 深(ふ)けて 雪の重きを知る 時聞折竹声 時に聞く 折竹(せつちく)の声 なぜか布団や枕が冷たく、また窓のあたりがひときわ明る…

元日述懐

あけましておめでとうございます。 年も明けましたので、正月を詠った詩を一つ。 元日述懐 盧照隣 筮仕無中秩 筮仕(ぜいし)するも中秩無く 帰耕有外臣 帰耕して外臣有り 人歌小歳酒 人は歌ふ 小歳の酒 花舞大唐春 花は舞ふ 大唐の春 草色迷三径 草色 三径を…