2014-01-01から1年間の記事一覧

南史演義 巻2-4

孫恩は会稽を根拠地とし、自ら征東将軍と称し、むりやり人々を官職につけ、従わないものは、一家皆殺しにした。そのため死者は十人中七、八人にものぼった。その党派を「長生」と号し、四方に兵を出し、諸県令を殺してその肉を塩漬けにして、彼らの妻子に食…

秋興

秋興八首・其一 杜甫 玉露凋傷楓樹林 玉露 凋傷(ちょうしょう)す 楓樹の林 巫山巫峡気蕭森 巫山(ふざん)巫峡(ふきょう) 気 蕭森たり 江間波浪兼天湧 江間の波浪 天に兼(つら)なりて湧き 塞上風雲接地陰 塞上の風雲 地に接して陰(くも)る 叢菊両開他日涙 叢菊…

諸葛亮の「天下三分の計」

諸葛亮、字は孔明。『三国志』を題材とした作品の中ではしばしば天才軍師として描かれます。敵の心理や計略を読み、その裏をかくその軍略は、読む者を非常に興奮させるものでしょう。しかしそれはあくまで『三国志演義』など創作の物語における諸葛亮像であ…

南史演義 巻2-3

この時の会稽内史の王凝之(おうぎょうし)は、書聖王羲之の子であり、妻の謝道韞(しゃどううん)は、安西将軍謝奕(しゃえき)の娘であった。彼女は幼い頃から聡明で、才学に優れ、叔父の謝安も非常に愛していた。七、八歳の時、謝安は『詩経』の中でどれ…

中秋の詩

すでに季節は秋、先日は中秋の名月でした。 十五夜望月 十五夜に月を望む 王建 中庭地白樹棲鴉 中庭 地 白くして 樹に鴉 棲み 冷露無声湿桂花 冷露 声無くして 桂花を湿(うるお)す 今夜月明人尽望 今夜 月明 人 尽(ことごと)く望む 不知秋思在誰家 知らず 秋…

夏晩

8月最後の日です。 朝晩は幾分か涼しくなり、夏の終わりを感じさせます。そこで晩夏の詩を一首。 夏晩 薛道衡 流火稍西傾 流火 稍(や)や西に傾き 夕影遍曽城 夕影(せきえい) 曽城に遍(あまね)し 高天澄遠色 高天 遠色澄み 秋気入蝉声 秋気 蝉声(せん…

南史演義 巻2-2

その頃、東莞(とうかん)に臧俊(ぞうしゅん)という者があった。郡の功曹であり、人の相を見るのに優れていた。愛親という一人娘があり、その母叔孫氏は、月を呑む夢を見て彼女を妊娠した。容貌は端正で美しく、立ち居振る舞いもしとやかであった。臧俊は…

元二の安西に使ひするを送る

送元二使安西 元二の安西に使ひするを送る 王維 渭城朝雨浥軽塵 渭城(いじょう)の朝雨 軽塵を浥(うるお)し 客舎青青柳色新 客舎青青 柳色 新たなり 勧君更尽一杯酒 君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒 西出陽関無故人 西のかた陽関を出づれば故人無からん 渭城の…

袁紹と曹操

袁紹、字は本初。四世三公(四代にわたり官職の最高位である三公を出した)の名門袁氏の出身であり、後漢末の群雄の一人として冀州を中心に中国北部を支配し、一時は曹操をしのぐ勢力を誇ります。しかしその性格は名門意識が高いばかりで、猜疑心が強く、優…

南史演義 巻2-1

第二巻 劉寄奴 寇を滅ぼして功を立て 王孝伯 兵を称して戮を受く さて劉牢之(りゅうろうし)は、字は道堅、彭城の人である。顔は赤紫色で、生まれながら人並み外れた怪力を持ち、また物事に動じず沈着で知略も優れていた。太元年間の初めころ、謝玄が広陵に…

鹿柴

鹿柴 王維 空山不見人 空山 人を見ず 但聞人語響 但だ人語の響くを聞くのみ 返景入深林 返景 深林に入り 復照青苔上 復た照らす 青苔の上 ひっそりとした山に人の姿は見えず、ただどこからか人の声が響いてくるだけ。西に傾いた夕陽の光は深い林の中に差し込…

劉備のイメージ

劉備、字は玄徳。小説『三国志』においては一般に主人公として描かれる人物です。謙虚で義に厚く仁愛に富んだ人柄や、漢王朝復興を目的として粉骨砕身する姿が共感を呼び、曹操という強大な敵役に対する反発もあって、いわゆる判官贔屓的な人気があります。 …

勧酒

勧酒 酒を勧む 勧君金屈巵 君に勧む 金屈巵(きんくつし) 満酌不須辞 満酌(まんしゃく) 辞するを須(もち)ひず 花発多風雨 花発(ひら)くや 風雨多し 人生足別離 人生 別離足(た)る さあ君にこの黄金の杯を勧めよう。なみなみとついだ酒を、辞退など…

南史演義 巻1-5

ある時、劉裕がたまたま孔靖(こうせい)の家の前を通った時、孔靖はちょうど昼寝をしていたが、たちまち金の鎧をまとった神人が現れて言った。「起きよ!起きよ!天子が門の前におられるぞ。」孔靖は驚いて起き上がってすぐに外を見ると、他に誰もおらず、…

山中問答

山中問答 李白 問余何意棲碧山 余に問ふ 何の意ぞ 碧山(へきざん)に棲むと 笑而不答心自閑 笑ひて答へず 心 自(おのづか)ら閑なり 桃花流水窅然去 桃花流水 窅然(ようぜん)として去る 別有天地非人間 別に天地の人間(じんかん)に非ざる有り どのようなつもり…

『蒼天航路』雑感

『蒼天航路』とは、李學仁(イ・ハギン)原案・王欣太(KING★GONTA)画の『三国志』のマンガです。ただこのマンガは他の『三国志』マンガと異なり、正史『三国志』をベースとし、一般的な『三国志』ではしばしば悪役として描かれる曹操を主人公とした点で画…

南史演義 巻1-4

一方、王恭(おうきょう)は任地に帰ってより後、王国宝のなすことを深く憎み、まさに兵を挙げてこれを誅殺しようと思っていた。そしてある日、殷仲堪(いんちゅうかん)に書状を送って言った。「国宝らが政治を乱すことはますます甚だしく、ついには国家の…

桃夭

先日、「桃園の誓い」でも触れましたが、中国で春の花と言えば一つ桃がイメージされます。 桃之夭夭 桃の夭夭(ようよう)たる 灼灼其華 灼灼たる其の華 之子于帰 之(こ)の子 于(ここ)に帰(とつ)ぐ 宜其室家 其の室家に宜(よろ)しからん 桃の木は若…

桃園の誓い

4月に入り、花も盛りの季節となりました。日本では春の花といえば桜ですが、中国では桃のイメージが強いようです。そして桃の花の咲き誇る「桃園」で劉備、関羽、張飛の3人が義兄弟の契りを結ぶところから、小説『三国志演義』の物語は始まります。(桃園…

南史演義 巻1-3

ところで王恭(おうきょう)は、帝の崩御を聞き、夜中に飛び起きて都にやって来て、大いに哀しんだ。そして宮殿を仰ぎ見て嘆息した。「侫臣が跋扈(ばっこ)し、国事は日に日に乱れていく。たる木はまだ新しいのに、はやくも黍離(しょり)の嘆きを感じずに…

楓橋夜泊

楓橋夜泊 張継(ちょうけい) 月落烏鳴霜満天 月落ち烏(からす)鳴きて 霜 天に満つ 江楓漁火対愁眠 江楓 漁火 愁眠に対す 姑蘇城外寒山寺 姑蘇(こそ)城外 寒山寺 夜半鐘声到客船 夜半の鐘声(しょうせい) 客船に到る 月が落ち烏が鳴き、霜の気は天に満…

南史演義 巻1-2

当時、朝臣の中では王恭(おうきょう)、殷仲堪(いんちゅうかん)が最も声望があったので、帝は彼らに地方に派遣して軍権を与え、道子の権力を分散させようとした。ある日、王雅が側らにあったので彼に問うた。「朕は王恭を兗(えん)・青二州刺史として京…

曹操の風貌

以前のエントリーで、現在では曹操のイメージが多様化しているとして、ネット上のさまざまな曹操像を紹介しました。では実際の曹操はどのような風貌だったのでしょうか。 まず小説『三国志演義』の記述を見てみると、その登場シーンは以下の通りです。 先頭…

南史演義 巻1-1

第一巻 晋室 将に亡びんとして廊廟乱れ 宋家 運に応じて帝王興る 晋の太興元年(280)、武帝司馬炎によって中国は統一され、三国時代は終わりを告げる。しかしその平和な世もつかの間、武帝の死後、後を継いだ恵帝は国事を顧みず、その妃賈后がさらに政治を…

南史演義(0)

演義とは、中国の白話小説の一種で、歴史を題材とした小説をいいます。日本では『三国志演義』くらいしか知られていませんが、中国には四千年の歴史があるわけで、その長さに応じるように実は非常に数多くの演義が作られています。一部『封神演義』、『隋唐…

白髪三千丈

秋浦歌十七首・其十五 李白 白髪三千丈 白髪 三千丈 縁愁似箇長 愁ひに縁(よ)りて箇(かく)の似(ごと)く長し 不知明鏡裏 知らず 明鏡の裏(うち) 何処得秋霜 何れの処よりか秋霜を得たる 我が白髪は三千丈、愁いのためにこのように長くなってしまった…

「乱世の姦雄」曹操

今回は曹操について少し述べてみたいと思います。 小説『三国志演義』において、魏の曹操は「乱世の姦雄」と呼ばれ、一般に悪役として描かれています。 この語は、若かりし頃の曹操が、許劭という人物に「君は治世の能臣、乱世の姦雄だ」と評されたことに基…

廬山の瀑布

今日は李白の「望廬山瀑布」(廬山の瀑布を望む)詩について。 望廬山瀑布 廬山の瀑布を望む 日照香炉生紫煙 日 香炉を照らして 紫煙生ず 遥看瀑布挂前川 遥かに看る 瀑布の前川に挂(か)かるを 飛流直下三千尺 飛流直下 三千尺 疑是銀河落九天 疑ふらくは…

三国志雑感

最初はやはり『三国志』の話から。 一口に『三国志』といっても、実は大きく二つに分けられます。 晋・陳寿の編纂した歴史書である『三国志』と、明・羅貫中の作とされる小説『三国志演義』です。日本で一般に『三国志』という場合、多くは小説『三国志演義…

復活します

約二年ぶりにブログを復活します。 この復活に際して、改めてタイトルについて少し説明します。 このブログタイトルは「ちんしかんそう」と読みます。 「沈思」とは、心の奥底にある思い、「翰藻」とは、修飾された美しい文章のことですが、この語源は、六朝…