南史演義 巻6-4

 ところでこの時、劉毅(りゅうき)は姑孰(こじゅく)に駐屯していた。乱を聞くとすぐに兵を出して賊を討とうとしたが、病のために果たせなかった。しかし何無忌(かむき)が敗れたと聞くと、病をおして兵を起こし、盧循(ろじゅん)を討とうとした。劉裕は彼が敵を軽んずることを恐れ、次のような書簡を送り、これを止めようとした。

続きを読む

南史演義 巻6-3

 江州にあった何無忌(かむき)は賊徒の報告を受けて激怒した。「やつらは朝廷に人がいないと侮っているのか?」そして尋陽(じんよう)から軍を起こしてこれを撃とうとした。長史の鄧潜之(とうせんし)は諫めて言った。「聞くところ賊兵は非常に盛んで、また上流に居りますので、これを迎え撃って戦うには不利です。今は城壁を堅く守って待つべきです。そうすれば彼らは我らを捨てて遠く下っていきましょう。力を蓄えて鋭気を養い、相手が疲労するのを待って、その後に攻めかかるのです。これが万全の策です。」

続きを読む

南史演義 巻6-2

 羅氏(らし)は盧循(ろじゅん)の人物の意気軒昂なことを思い出し、夫にふさわしいと考え、人を遣わして盧循に結婚するよう説いた。しかし盧循には妻があるためこれを断った。帰ってきた使者が報告すると、羅氏は笑って何も言わなかった。

 ある日突然、楼船百艘を連ね、数千の兵を率いて、羅氏自ら番禺(ばんぐう)にやって来た。盧循が出迎えると羅氏は言った。「あなたは当世の英雄で、私もまた女の中の豪傑だと思っています。この身をあなたに託し、あなたが大事を成し遂げるのを助けたいのです。どうして同意されないのですか?」

続きを読む

南史演義 巻6-1

第六巻
 東寇 虚に乗じて社稷を危うくし 北師 国に返りて烽煙を靖(やす)んず


(1)

 さて晋は広固(こうこ)に総攻撃をかけ、早朝から将兵がひとしく奮戦したため、昼にはついに陥落した。燕王慕容超(ぼようちょう)は数十騎を率いて突撃し、包囲を破って脱出しようとしたが、晋軍に追撃されて捕らえられ、劉裕の前に引き立てられた。劉裕は彼を階下に立たせ、降伏しなかった罪を責め立てた。慕容超は泰然自若として一言も発しなかった。

続きを読む

将進酒

 将進酒   李白

君不見黄河之水天上来  君 見ずや 黄河の水 天上より来たるを
奔流到海不復回     奔流 海に到りて 復た回(かへ)らず
君不見高堂明鏡悲白髪  君 見ずや 高堂の明鏡に白髪を悲しむを
朝如青糸暮成雪     朝には青糸の如きも 暮には雪と成る
人生得意須尽歓     人生 意を得ば 須(すべか)らく歓を尽くすべし
莫使金樽空対月     金樽をして空しく月に対せしむる莫かれ
天生我材必有用     天 我が材を生ずれば 必ず用有り
千金散尽還復来     千金 散じ尽くして 還(ま)た復た来たらん
烹羊宰牛且為楽     羊を烹(に) 牛を宰して 且く楽しみを為さん
会須一飲三百杯     会(かなら)ず須らく一飲三百杯なるべし
岑夫子 丹丘生     岑夫子(しんふうし) 丹丘生(たんきゅうせい)
将進酒 杯莫停     将に酒を進めんとす 杯 停むること莫かれ
与君歌一曲       君が与(ため)に一曲を歌はん
請君為我傾耳聴     請ふ 君 我が為に耳を傾けて聴け
鐘鼓饌玉不足貴     鐘鼓 饌玉 貴ぶに足らず
但願長酔不用醒     但だ長酔を願ひて醒むるを用ひず
古来聖賢皆寂寞     古来 聖賢 皆 寂寞
惟有飲者留其名     惟だ飲者の其の名を留むる有るのみ
陳王昔時宴平楽     陳王 昔時 平楽に宴し
斗酒十千恣歓謔     斗酒十千 歓謔を恣(ほしいまま)にす
主人何為言少銭     主人 何為(なんす)れぞ 銭少なしと言はん
径須沽取対君酌     径(ただち)に須らく沽(か)ひ取りて君に対して酌むべし
五花馬 千金裘     五花の馬 千金の裘
呼児将出換美酒     児を呼び将(も)ち出だして 美酒に換へしめ
与爾同銷万古愁     爾と同に銷(け)さん 万古の愁ひ

 

続きを読む