白髪三千丈

 秋浦歌十七首・其十五    李白

白髪三千丈  白髪 三千丈

縁愁似箇長  愁ひに縁(よ)りて箇(かく)の似(ごと)く長し

不知明鏡裏  知らず 明鏡の裏(うち)

何処得秋霜  何れの処よりか秋霜を得たる

 

 我が白髪は三千丈、愁いのためにこのように長くなってしまった。澄みきった鏡ををのぞき込んでみるが、いったいどこからこの秋の霜が降ってきたのだろうか。

 

 「秋浦」とは地名で今の安徽省貴池市にあたります。この地には秋浦河、清渓河といった清らかで澄んだ川が流れ、晩年の李白はこの地を愛し、十七首の連作を作ります。その中でも最も有名なのがこの詩です。

 

 李白はここで愁いのために三千丈もの長さになった白髪を「明鏡」、すなわち澄みきった秋浦の水面に映して嘆いています。三千丈といえばおよそ九千メートル、まずあり得ない数字ですが、それによって愁いの深さが強調されています。

 他の詩人ではまずできない奇抜な表現であり、誇張の詩人李白の真骨頂を示す詩と言えるでしょう。