南史演義 巻4-8

 壬申(じんしん)、群臣は劉裕を領揚州刺史に推挙したが、劉裕は王謐(おうひつ)の恩に感じており、この領揚州刺史をもってこれに酬いることにした。そこで劉裕を推挙して大将軍・都督揚徐袞予青冀幽并八州軍事とした。そして劉毅(りゅうき)青州刺史とし、何無忌(かむき)を琅邪(ろうや)内史とし、孟昶(もうちょう)を丹陽尹(たんよういん)とした。その他諸々の処置はみな劉穆之(りゅうぼくし)にゆだねた。彼はこの慌ただしい中、立ちどころに諸事を定め、まったく不備はなかった。

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南史演義 巻4-7

 桓玄は二将の死を聞き、大いにおそれ、群臣に問うた。「わしは敗れるのか?」吏部郎の曹靖之(そうせいし)は答えて言った。「民は怨み、神は怒っております。臣はまことにそれを懼れております。」桓玄「民が怨むのはともかく、神はどうして怒っているのか?」曹靖之「晋室の宗廟は、長江のほとりを漂泊しており、楚を興した際の宗廟は、祖父君にさかのぼることはありませんでした。神がどうして怒ってないことがありましょうか!」桓玄「卿はどうして諫めなかったのか?」曹靖之「朝廷の人々はみな堯舜の世と称えておりました。臣一人がどうして何か言えましょうか?」桓玄は黙ったままであった。

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酒を把りて月に問ふ

 

 把酒問月  酒を把(と)りて月に問ふ  李白
青天有月来幾時  青天 月有りて来(このか)た幾時ぞ
我今停杯一問之  我 今 杯を停めて一たび之に問ふ
人攀明月不可得  人 明月を攀(よ)づるも得(う)べからず
月行却与人相随  月行 却(かえ)って人と相ひ随ふ
皎如飛鏡臨丹闕  皎として飛鏡の丹闕(たんけつ)に臨むが如く
緑煙滅尽清輝発  緑煙 滅し尽くして 清輝 発す
但見宵従海上来  但だ見る 宵に海上より来たるを
寧知暁向雲間没  寧(なん)ぞ知らん 暁に雲間に向ひて没するを
白兔擣薬秋復春  白兔 薬を擣(つ)きて 秋 復た春
姮娥孤棲与誰隣  姮娥(こうが) 孤(ひと)り棲みて 誰と隣ならん
今人不見古時月  今の人 古時の月を見ず
今月曽経照古人  今の月 曽経(かつ)て古人を照らす
古人今人若流水  古人今人 流水の若く
共看明月皆如此  共に明月を看ること 皆 此(かく)の如し
唯願当歌対酒時  唯だ願ふ 歌に当たり酒に対するの時
月光長照金樽裏  月光 長(とこし)へに金樽の裏(うち)を照らさんことを

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南史演義 巻4-6

 さて呉甫之(ごほし)は江乗(こうじょう)まで進軍し、そこで劉裕軍と相遇した。呉甫之の兵は劉裕軍の数倍あり、甲冑や騎馬が陣に連なり、矛や槍は日に照らされ輝いていた。劉裕の兵はそれを見てみな恐れたが、劉裕は言った。「今日の戦は、進むことはあっても退くことはない、成敗はこの一戦にある。諸君、つとめよ!」そこで自ら士卒に先んじて、手に長刀を執り、大声を上げて突入していった。その勢いに敵は思わずみな兵を開いた。呉甫之は進んでこれを迎え撃ち、劉裕はその馬前に突進していった。

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南史演義 巻4-5

 さて一方、この同じ日、孟昶(もうちょう)青州にあり、桓宏(かんこう)に出猟するように勧め、その許可を得ていた。まだ夜が明けぬうちに門を開かせると、猟に出るはずの孟昶、劉毅(りゅうき)、劉道規(りゅうどうき)らは、壮士数十人を率い、間隙に乗じて突入した。桓宏はちょうど粥を食べていたが、劉毅等がやってくるのを見ると、箸を投げて立とうとしたが、道規がその直前に彼を斬った。左右は大いに乱れ、数人を殺してようやく止まった。

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