香山避暑
香山避暑 白居易
六月灘声如猛雨 六月 灘声(たんせい) 猛雨の如し
香山楼北暢師房 香山の楼北 暢師(ちょうし)の房
夜深起憑闌干立 夜深くして 起ちて闌干(らんかん)に憑りて立てば
満耳潺湲満面涼 耳に満つる潺湲(せんかん) 面に満つる涼
夏六月、岩にぶつかる早瀬の音は、まるで激しい雨のよう。ここは香山寺の高楼の北、文暢禅師のお部屋。夜も更けたころ、起き上がって欄干に寄りかかって立っていると、耳には清流の水音が満ちあふれ、顔には涼しさが満ちわたる。
※[六月]旧暦の六月は、新暦の六月下旬から八月上旬、盛夏にあたる。[灘声]岩にぶつかる早瀬の音。 [香山]寺の名。香山寺。 [暢師]香山寺の高僧の一人、文暢禅師(もんちょうぜんじ)をいう。 [闌干]手すり。欄干。 [潺湲]水の流れる音。
ここしばらく厳しい暑さが続いていますが、中国の詩人たちは、夏場にはしばしば山や渓谷などに涼を求め、避暑に出かけます。
この詩もまさにその避暑の詩です。山深き寺の夜、そこで聞こえる早瀬の音、顔に感じる水飛沫、見事に夏の「涼」を描き上げている詩ではないかと思います。