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玉階怨―謝朓

  玉階怨   謝朓(しゃちょう)
夕殿下珠簾   夕殿(せきでん) 珠簾を下ろし
流蛍飛復息   流蛍 飛びて復た息ふ
長夜縫羅衣   長夜 羅衣を縫ひ
思君此何極   君を思ふこと此(ここ)に何ぞ極まらん

 

 夕方の宮殿では珠のすだれが下ろされ、流れていく蛍が飛んではまた休んでいる。長いこの夜に私は薄絹の衣を縫いながら、あなたへの思いがどうして尽きることがありましょうか。

 

※[玉階]玉で作られた階(きざはし)。その上に宮女がおり、男性の訪れを待っている。 [羅衣]薄絹の衣。 

 

 以前取り上げた何遜(かそん)と同様に唐詩の先駆の一人とされる詩人を挙げます。
 作者謝朓は、字は玄暉、六朝・南斉の詩人です。名門貴族の出身で、五言詩に優れ、同時代の人々にも非常に高く評価されましたが、最後は政争に巻き込まれ獄死します。その詩は後世にも大きな影響を与え、精巧で繊細優美なその詩風は、とりわけ唐の李白に敬慕されました。

 これはいわゆる閨怨詩ですが、「玉階」「夕殿」という語から宮中の女性を連想させます。多くは語られませんが、おそらく主君の寵愛を失った女性ででしょう。日が暮れた宮殿で独り過ごす女性、その前を一匹の蛍が弱々しく飛んでいきます。それは女性自身の姿でもあります。その蛍のはかなさと対比することで、三、四句の相手を思い続ける夜の長さが際立つのです。

 五言四句という短い詩の中で、蛍のはかなさ、女性の憂い、男への尽きぬ思いを、静かな夜の中に見事に描き出した六朝絶句の最傑作とも言われます。