読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

簿領の書に沈迷す

 雑詩  劉楨

職事相填委  職事 相ひ填委(てんい)

文墨紛消散  文墨 紛として消散す

馳翰未暇食  翰(ふで)を馳せて未だ食するに暇(いとま)あらず

日昃不知晏  日 昃(かたむ)くも晏(いこ)ふを知らず

沈迷簿領書  簿領(ぼりょう)の書に沈迷し

回回自昏乱  回回として自ら昏乱(こんらん)

釈此出西城  此を釈(す)てて西城を出で

登高且遊観  高きに登りて且(いささ)か遊観せんとす

方塘含白水  方塘 白水を含み

中有鳧与雁  中に鳧(かも)と雁と有り

安得粛粛羽  安(いづ)くにか粛粛たる羽を得て

従爾浮波瀾  爾(なんぢ)に従ひて波瀾に浮かばん

 

 仕事があれこれと積み重なって、ただ文書を次々と片付けていく。筆を走らせて食事をする暇もなく、日が傾いても休むことを思いつかなかった。帳簿や記録におぼれ惑い、心は乱れて混乱してきた。そこでこの仕事をおいて西の城を出て、高いところに登って風景を見て気を晴らそうとした。四角い池には透き通るような白い水が湛えられ、中には鴨や雁がいる。どこかであの空飛ぶ羽を手に入れて、お前たちに従って波に浮かんで楽しみたいものだなあ。

 

 劉楨(りゅうてい)は、後漢末~三国時代(2世紀末~3世紀)の人で、曹操やその子曹丕曹植らとともに、盛んに詩を作り合っていたいわゆる「建安七子」の一人です。

 

 今から1800年ほど前の人ですが、仕事に追われ忙しいときの思いがよく表されていると思います。やはりいつの時代も考え方はそれほど変わらないのでしょう。「忙中 閑有り」(忙しい中にも閑はある)という言葉もありますが、忙しいときこそ、ひまを見つけて気分転換することが大切ですね。