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南史演義 巻4-3

 桓修(かんしゅう)が任地に帰る際、劉裕もともに帰るべきところであったが、戦の傷が痛んで馬に乗れないと理由をつけ、何無忌(かむき)とともに同じ船で帰ることとし、ひそかに桓玄打倒の計を練った。京口に帰ると、たまたま孟昶(もうちょう)も家に還っており、劉裕を訪ねてきた。劉裕は彼に言った。「草間より英雄が起こるという。卿は聞いているか?」孟昶は言った。「今日、英雄が誰かと言えば、まさしくあなたです。」劉裕は大いに笑い、ともに大計を謀り、ひそかに義を結んだ。

  この時、劉毅(りゅうき)、魏詠之(ぎえいし)、諸葛長民(しょかつちょうみん)、檀憑之(たんひょうし)、王玄徳(おうげんとく)、王仲徳(おうちゅうとく)、辛扈興(しんここう)、童厚之(どうこうし)、劉毅の兄の劉邁(りゅうまい)、劉裕の弟の劉道規(りゅうどうき)等二十七人の同志があり、さらにその他従うことを願う者は百人余りであった。みな劉裕を推して盟主とした。

 劉裕は孟昶に命じて言った。「我が弟道規は桓宏(かんこう)の参軍であり、卿は主薄だ。青州でことを起こすのが良い。希楽〔劉毅の字〕に卿らを助けさせよう。桓宏を殺して兵を収め、広陵を押さえよ。」また魏詠之に言った。「諸葛長民は刁逵(ちょうき)の参軍だ。卿も行って彼を助け、刁逵を殺して兵を収め、歴陽を押さえよ。」辛扈興、童厚之に言った。「卿ら二人は速やかに都に行き、劉邁、王玄徳兄弟を助け、時が来たら内応せよ。私と何無忌は京口で桓修を殺し、兵を収めて桓玄を討つ。」同日にことを起こすことを約定し、遅誤のないようにとした。人々は命を受けて、それぞれ分かれて行った。

 

 ところで孟昶の妻の周氏は、実家の財産も豊かで、賢く智恵もあった。孟昶は帰ってその妻に語って言った。「劉邁は私を桓公にそしり、私の一生を沈んだままにさせた。私は賊になろうと決めた。お前はどうか早く離縁してくれ。富貴を得てから、迎えに行っても遅くはあるまい。」周氏は言った。「あなたの御父母がご健在で、常ならぬ謀を立てようとされるのに、どうして妻がそれを止められましょう。事がもし成らなければ、牢獄の中で舅姑様に孝養を尽くします。義とは後を顧みない志なのです。」孟昶はしばらく何か言いたげであったが、何も言わずやがて起ち上がった。周氏は孟昶を追いかけてまた座って言った。「あなたの様子を見ますに、私と謀について話したいのではなく、事を起こすための資金を求めたいのでしょう。」そこで抱いている子を示して言った。「この子を売っても惜しむものではありません。ましてや財物など!」孟昶は言った。「確かに君の言うとおり、今、我らの資金は非常に厳しい状態で、かなり苦労しているんだ。」妻はそこで家にある全ての財貨を与えた。

 孟昶の弟、孟顗(もうがい)の妻は周氏の妹であった。周氏はいつわって彼女に言った。「昨夜、悪い夢を見ました。赤色は良くないので、家の中にあるそれらをすべて取ってきて、不吉を払うようにしましょう。」これを聞いた妹は家中の赤いものをすべて彼女に渡した。周氏はそれらを縫い合わせて兵士たちの衣とした。