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秋日

 秋日   耿湋
反照入閭巷      反照 閭巷(りょこう)に入(い)
憂来与誰語      憂ひ来たりて誰とか語らん
古道無人行      古道 人 行くこと無く
秋風動禾黍      秋風 禾黍(かしょ)を動かす

  

 夕陽が小さな村里に差し込んでいる。憂いがつのってきたが、この思いを誰と語り合えばよいのか。古い道には人の往来も無く、ただ秋風が稲や黍の穂を吹き動かしているばかり。

  

※[反照]傾いた夕陽。 [閭巷]小さな村里。 [禾黍]稲や黍。

 

 作者耿湋(こうい)は、日本ではあまり知られていない詩人ですが、この詩は『唐詩選』にも収められており、比較的有名な作品です。
 秋の夕暮れ時、愁いに沈む様子を詠ったもので、とりわけ転句、結句の描写――人気のない古道で秋風だけが吹いているという風景は、まさに秋の寂寥感を強く抱かせるものと言えるでしょう。
 また後半のこの二句は、松尾芭蕉の以下の有名な俳句に影響を与えたとも言われます。

この道や行く人なしに秋の暮れ

 実際のところはどうか分かりませんが、人のいない静かな秋の道には、詩人たちの感興を呼び起こす何かがあるのでしょう。

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