秋風引

 すっかり秋になりました。そこで秋の詩を一つ。

 秋風引   劉禹錫
何処秋風至      何れの処よりか秋風至り
蕭蕭送雁群      蕭蕭として雁の群を送る
朝来入庭樹      朝来 庭樹に入り
孤客最先聞      孤客 最も先に聞く

 

 どこからともなく秋風が吹いてきて、ひゅうひゅうと音を立てて雁の群を送っていく。明け方、この風が庭の樹に吹き付けてきたが、孤独な旅人である私が誰よりも早くそれを聞いたのだ。

  これは秋風を詠った有名な作品です。その作詩背景は不明ですが、おそらく作者である劉禹錫が、中央から左遷された旅の途上で作られたものではないでしょうか。
 この中の「蕭蕭」とは風の吹く音の形容ですが、漢代の無名氏の「古歌」に「秋風 蕭蕭として人を愁殺す」とあり、人の憂いを一層引き立てる音でもあります。この詩の中に、直接的な心情描写はありませんが、秋風、雁、孤客(旅人)の三者を巧みに連ね、秋のもの寂しさを見事に描き上げた作品となっています。