元日述懐
あけましておめでとうございます。
年も明けましたので、正月を詠った詩を一つ。
元日述懐 盧照隣
筮仕無中秩 筮仕(ぜいし)するも中秩無く
帰耕有外臣 帰耕して外臣有り
人歌小歳酒 人は歌ふ 小歳の酒
花舞大唐春 花は舞ふ 大唐の春
草色迷三径 草色 三径を迷わせ
風光動四隣 風光 四隣に動く
願得長如此 願はくは 長(とこし)へに此(かく)の如く
年年物候新 年年 物候の新たなるを得ん
ようやく官職に就いたが、適切な俸禄も与えられないので、宮仕えを辞めて田園に帰ることにした。人々は年の暮れの祝い酒を飲みながら歌い、花々は我が大唐王朝の春に舞い散っている。青々とした草の色は我が家の小径をおおい隠し、春の風と光があたり一面に揺れ動いている。願わくはいつまでもこのように、毎年毎年新たなる風物を鑑賞できますように。
※[筮仕]初めて官職につくこと。 [中秩]十分な俸禄。 [帰耕]官を辞めて田園に帰ること。 [外臣]内臣(朝廷に仕える臣)に対して、朝廷から勤めを外れた臣。 [小歳]冬至後、第三の戌の日に行う臘の祭りの翌日。ここでは年の暮れの祭りの意味であろう。 [三径]隠者の家の小径。漢の隠者蒋詡(しょうく)の家に三本の小径があったことからいう。
これは初唐の詩人、盧照隣(ろしょうりん)の作です。
盧照隣は、字は昇之。王勃、楊炯、駱賓王とともに初唐の四桀の一人に数えられ、その華麗な詩は高く評価されています。
この詩はある年の元日を迎え、その時の思いを詠ったものです。この中の「花は舞ふ大唐の春」という句は、唐の都長安の華やかさを端的に表現したものとしてよく知られています。
詩の最後に、「願はくは長へに此の如く 年年 物候の新たなるを得ん」とありますが、まさにこのように今後もずっと毎年毎年新たなる素晴らしい一年を迎えたいものです。