中秋の詩

 すでに季節は秋、先日は中秋の名月でした。

 十五夜望月  十五夜に月を望む   王建

中庭地白樹棲鴉  中庭 地 白くして 樹に鴉 棲み

冷露無声湿桂花  冷露 声無くして 桂花を湿(うるお)

今夜月明人尽望  今夜 月明 人 尽(ことごと)く望む

不知秋思在誰家  知らず 秋思 誰が家にか在る

 

 中庭の地面は月に照らされて白く、樹には鴉が止まっている。冷たい露は音もなく降りて桂の花をしっとりとぬらしている。今夜のこの明月を、人々はみな眺めているだろうが、その中で秋の物思いにふけっているのはどこの家の人だろうか。

 

 作者の王建はあまり日本ではなじみがありませんが、中唐の詩人でかの韓愈と忘年の交わりを結んだといいます。

 この詩は十五夜に月を眺めたことを詠った詩です。白く照らされる中庭、木に棲む鴉、露に濡れる桂の花など、静かな秋の風景が描かれ、その視線は空へと向かいます。

 十五夜の明月とは誰しもが眺めるものであり、おそらくどこかにこの月を見て物思いにふけっている人がいるであろうと想像します。

 

 せわしない現代ですが、たまには何も考えず静かに月を見るのも良いものだと思います。

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