南史演義

南史演義 巻6-8

これより先、劉裕は兵を指揮して進み戦わせたが、持っていた旗竿が突然折れ、旗が水に沈んでしまった。兵はみな色を失った。しかし劉裕は笑って言った。「かつて覆舟山(ふくしゅうざん)の戦においても旗竿が折れ、今またそうなった。この賊は必ず平らげられ…

南史演義 巻6-7

さて、徐道覆(じょどうふく)は江陵に攻めていったが、江陵の守将劉道規(りゅうどうき)は、劉裕の弟である。初め賊が都に迫ったと聞くと、その将檀道済(たんどうせい)に兵三千を率いさせて救援に向かわせた。しかし尋陽(じんよう)まで至ると、賊将荀林(じゅん…

南史演義 巻6-6

劉裕は石頭城(せきとうじょう)に登ってこれを眺め、初め盧循(ろじゅん)の軍が新亭(しんてい)に向かうのを見ると、左右を顧みて色を失った。やがて蔡州(さいしゅう)にまわって停泊すると、そこで喜んだ。劉毅(りゅうき)は晋の南の辺地にわたってようやく助か…

南史演義 巻6-5

この時、劉裕の軍は北から帰還したばかりで、将兵には傷病者も多く、健康な兵は一万にも満たなかった。劉毅(りゅうき)が敗れた後、賊の勢力はますます盛んになり、その兵は十万余、舟や車は百里にわたって絶えず、楼船の高さは十二丈もあった。賊に敗れて還…

南史演義 巻6-4

ところでこの時、劉毅(りゅうき)は姑孰(こじゅく)に駐屯していた。乱を聞くとすぐに兵を出して賊を討とうとしたが、病のために果たせなかった。しかし何無忌(かむき)が敗れたと聞くと、病をおして兵を起こし、盧循(ろじゅん)を討とうとした。劉裕は彼が敵を…

南史演義 巻6-3

江州にあった何無忌(かむき)は賊徒の報告を受けて激怒した。「やつらは朝廷に人がいないと侮っているのか?」そして尋陽(じんよう)から軍を起こしてこれを撃とうとした。長史の鄧潜之(とうせんし)は諫めて言った。「聞くところ賊兵は非常に盛んで、また上流…

南史演義 巻6-2

羅氏(らし)は盧循(ろじゅん)の人物の意気軒昂なことを思い出し、夫にふさわしいと考え、人を遣わして盧循に結婚するよう説いた。しかし盧循には妻があるためこれを断った。帰ってきた使者が報告すると、羅氏は笑って何も言わなかった。 ある日突然、楼船百艘…

南史演義 巻6-1

第六巻 東寇 虚に乗じて社稷を危うくし 北師 国に返りて烽煙を靖(やす)んず (1) さて晋は広固(こうこ)に総攻撃をかけ、早朝から将兵がひとしく奮戦したため、昼にはついに陥落した。燕王慕容超(ぼようちょう)は数十騎を率いて突撃し、包囲を破って脱出し…

南史演義 巻5-8

慕容超(ぼようちょう)はそこで韓範(かんはん)を秦に遣わして援軍を求めさせた。しかし彼らは知る由もなかったが、そのころ秦は夏(か)の侵攻を受け、兵を出しても敗戦が続いており、他を顧みる余裕はなかったのである。そのため先に遣わされた張綱(ちょうこう…

南史演義 巻5-7

段暉(だんき)の言に対して、慕容超(ぼようちょう)は言った。「卿の下策がすなわち上策だ。今、歳星は斉の方角にある。すなわち天道から推察すれば、戦わずとも勝ちは得られるはずだ。そして我が方と敵の状勢はそれぞれ異なるが、人事から言っても勝ちの状勢…

南史演義 巻5-6

その冬、汝水(じょすい)は乾上がり、黄河は凍ったが、澠水(べんすい)は凍らなかった。燕王慕容超(ぼようちょう)は左右に問うた。「澠水はどうして凍らないのか?」右筆の李宣(りせん)は言った。「その川は京城を巡っており、日や月〔天子や皇后を指す〕に近…

南史演義 巻5-5

長安を出て一日も立たないうちに、慕容超(ぼようちょう)らは燕との境界にたどり着いた。地方官が先行して燕王に奏上した。燕王慕容徳(ぼようとく)はこれを聞いて大いに喜び、騎兵三百を遣わして彼を迎えた。慕容超は広固(こうこ)に至り、そこで慕容徳に会っ…

南史演義 巻5-4

ところで南燕王慕容徳(ぼようとく)は、はじめ前秦に仕えて張掖(ちょうえき)太守となった。母の公孫氏(こうそんし)、同母兄の慕容納(ぼようのう)はみな張掖に住んでいた。淮南の役〔前秦の苻堅が南下して東晋を攻めた戦〕では慕容徳は苻堅(ふけん)にしたがっ…

南史演義 巻5-3

夏四月、劉裕は藩国に帰ることを願い出た。詔があり、改めて都督荊司等十六州諸軍事に任じられ、軍を率いて京口(けいこう)に還った。 これより先、桓玄が禅譲を受けた際、王謐(おうひつ)は司徒となり、自ら安帝の玉璽を解いて桓玄に奉った。その王謐が揚州刺…

南史演義 巻5-2

これより先、劉裕は劉敬宣(りゅうけいせん)に命じて諸軍の後援としていた。敬宣は日夜おこたることなく武器甲冑を整え、金や糧食を集め蓄えていた。そのため何無忌(かむき)等は敗退したとはいえ、これらを得てまた士気は高まった。兵を数十日とどめた後、ま…

南史演義 巻5-1

第五巻 晋室を扶(たす)けて四方は悦び服し 燕邦を伐ちて一挙に蕩平す さてこの桓玄(かんげん)を殺したのは、すなわち益州刺史毛璩(もうきょ)の甥、毛祐之(もうゆうし)であった。桓玄が帝位を簒奪した際、毛璩を益州刺史とし、さらに左将軍を加えようとしたが…

南史演義 巻4-10

桓玄は足の速い船に乗って、西のかた江陵へと敗走した。郭銓(かくせん)は陣前で劉毅(りゅうき)に降った。殷仲文(いんちゅうぶん)は、はじめ桓玄に従って逃走したが、道中で引き返し、巴陵(はりょう)で何皇后と王皇后を迎え、二皇后を奉じて都建康へ向かった…

南史演義 巻4-9

さて桓玄は尋陽(じんよう)に敗走したが、郭昶之(かくちょうし)が武器や兵力を支給したため、軍力を少し回復した。何無忌(かむき)、劉毅(りゅうき)、劉道規(りゅうどうき)の三将が追ってくるのを聞き、何澹之(かたんし)を留めて湓口(ほんこう)を守らせ、自身…

南史演義 巻4-8

壬申(じんしん)、群臣は劉裕を領揚州刺史に推挙したが、劉裕は王謐(おうひつ)の恩に感じており、この領揚州刺史をもってこれに酬いることにした。そこで劉裕を推挙して大将軍・都督揚徐袞予青冀幽并八州軍事とした。そして劉毅(りゅうき)を青州刺史とし、何…

南史演義 巻4-7

桓玄は二将の死を聞き、大いにおそれ、群臣に問うた。「わしは敗れるのか?」吏部郎の曹靖之(そうせいし)は答えて言った。「民は怨み、神は怒っております。臣はまことにそれを懼れております。」桓玄「民が怨むのはともかく、神はどうして怒っているのか?…

南史演義 巻4-6

さて呉甫之(ごほし)は江乗(こうじょう)まで進軍し、そこで劉裕軍と相遇した。呉甫之の兵は劉裕軍の数倍あり、甲冑や騎馬が陣に連なり、矛や槍は日に照らされ輝いていた。劉裕の兵はそれを見てみな恐れたが、劉裕は言った。「今日の戦は、進むことはあっても…

南史演義 巻4-5

さて一方、この同じ日、孟昶(もうちょう)は青州にあり、桓宏(かんこう)に出猟するように勧め、その許可を得ていた。まだ夜が明けぬうちに門を開かせると、猟に出るはずの孟昶、劉毅(りゅうき)、劉道規(りゅうどうき)らは、壮士数十人を率い、間隙に乗じて突…

南史演義 巻4-4

何無忌は事を挙げようとした際、家人に知られることを恐れ、夜、ひそかに屏風の後に檄文を書いていた。その母劉氏は、劉牢之(りゅうろうし)の姉であり、階段の上からこの様子をうかがい、桓玄を討とうとしていると知り、大いに喜んだ。そして彼を呼んで言っ…

南史演義 巻4-3

桓修(かんしゅう)が任地に帰る際、劉裕もともに帰るべきところであったが、戦の傷が痛んで馬に乗れないと理由をつけ、何無忌(かむき)とともに同じ船で帰ることとし、ひそかに桓玄打倒の計を練った。京口に帰ると、たまたま孟昶(もうちょう)も家に還っており…

南史演義 巻4-2

元興二年(403)十二月丁丑(ていちゅう)、群臣が入朝し、帝に正殿にて手ずから禅譲の詔を書くよう求めた。帝はやむを得ず司徒王謐(おうひつ)を遣わして玉璽を奉り、楚に帝位をお譲りになった。そして帝は位を降り、江州の雍安宮に移られた。百官は楚王府にや…

南史演義 巻4-1

第四巻 京口鎮に群雄は聚義し 建康城に偽主は潜逃す さて、劉敬宣(りゅうけいせん)は山陽に拠って、兵を集めて報復を謀ろうとしていた。そこに征討軍がやって来ると聞き、慌てて諸将とともに兵馬を整えて敵を迎え撃った。しかし兵はまだ十分修練もされておら…

南史演義 巻3-8

一方、劉牢之(りゅうろうし)は兵を退いて以降、人心を大いに失い、威望も激しくそこなわれ、心中非常に悔いていた。そしてある日、劉牢之を会稽内史に任ずる詔が下ると、彼は大いに懼れた。「こうなっては我が兵が奪われてしまう。禍が迫ってきた!」この時…

南史演義 巻3-7

この時、桓玄(かんげん)はしばしば勝利を収めていたとはいえ、やはり劉牢之(りゅうろうし)を恐れ、あえてすぐに都の門を犯そうとはしなかった。卞范之(べんはんし)が言った。「劉牢之が強兵数万を擁しながら、溧州(りつしゅう)に軍をとどめ、徘徊して進もう…

南史演義 巻3-6

ところで、庾楷(ゆかい)はもともと反覆の徒であり、先ごろ桓玄(かんげん)に味方したものの、ただ南昌(なんしょう)太守を与えられただけであったため、鬱鬱(うつうつ)として楽しまなかった。そして桓玄によって夏口(かこう)に移されたため、さらに不満を抱き…

南史演義 巻3-5

ところで楊広(ようこう)は襄陽(じょうよう)に逃げかえり、泣きながら瓊玉(けいぎょく)に言った。「弟は戦死し、我が軍は全滅しました。あなたの夫の一族はことごとく殺害され、襄陽は孤城となっています。恐らくはこれを守ることは難しいと思われます。どう…