南史演義 巻5-7

段暉(だんき)の言に対して、慕容超(ぼようちょう)は言った。「卿の下策がすなわち上策だ。今、歳星は斉の方角にある。すなわち天道から推察すれば、戦わずとも勝ちは得られるはずだ。そして我が方と敵の状勢はそれぞれ異なるが、人事から言っても勝ちの状勢…

南史演義 巻5-6

その冬、汝水(じょすい)は乾上がり、黄河は凍ったが、澠水(べんすい)は凍らなかった。燕王慕容超(ぼようちょう)は左右に問うた。「澠水はどうして凍らないのか?」右筆の李宣(りせん)は言った。「その川は京城を巡っており、日や月〔天子や皇后を指す〕に近…

南史演義 巻5-5

長安を出て一日も立たないうちに、慕容超(ぼようちょう)らは燕との境界にたどり着いた。地方官が先行して燕王に奏上した。燕王慕容徳(ぼようとく)はこれを聞いて大いに喜び、騎兵三百を遣わして彼を迎えた。慕容超は広固(こうこ)に至り、そこで慕容徳に会っ…

易水送別

易水送別 駱賓王 此地別燕丹 此の地 燕丹に別れ壮士髪衝冠 壮士 髪 冠を衝(つ)く昔時人已没 昔時 人 已に没し今日水猶寒 今日 水 猶ほ寒し この地はかつて荊軻が燕の太子丹と別れたところだ。当時の壮士たちは、髪が冠を突き上げるほど悲憤慷慨していた。そ…

南史演義 巻5-4

ところで南燕王慕容徳(ぼようとく)は、はじめ前秦に仕えて張掖(ちょうえき)太守となった。母の公孫氏(こうそんし)、同母兄の慕容納(ぼようのう)はみな張掖に住んでいた。淮南の役〔前秦の苻堅が南下して東晋を攻めた戦〕では慕容徳は苻堅(ふけん)にしたがっ…

南史演義 巻5-3

夏四月、劉裕は藩国に帰ることを願い出た。詔があり、改めて都督荊司等十六州諸軍事に任じられ、軍を率いて京口(けいこう)に還った。 これより先、桓玄が禅譲を受けた際、王謐(おうひつ)は司徒となり、自ら安帝の玉璽を解いて桓玄に奉った。その王謐が揚州刺…

南史演義 巻5-2

これより先、劉裕は劉敬宣(りゅうけいせん)に命じて諸軍の後援としていた。敬宣は日夜おこたることなく武器甲冑を整え、金や糧食を集め蓄えていた。そのため何無忌(かむき)等は敗退したとはいえ、これらを得てまた士気は高まった。兵を数十日とどめた後、ま…

南史演義 巻5-1

第五巻 晋室を扶(たす)けて四方は悦び服し 燕邦を伐ちて一挙に蕩平す さてこの桓玄(かんげん)を殺したのは、すなわち益州刺史毛璩(もうきょ)の甥、毛祐之(もうゆうし)であった。桓玄が帝位を簒奪した際、毛璩を益州刺史とし、さらに左将軍を加えようとしたが…

歩出夏門行〔観滄海〕 ― 曹操

歩出夏門行〔観滄海〕 曹操 東臨碣石 東のかた碣石(けっせき)に臨み以観滄海 以て滄海を観る水何澹澹 水は何ぞ澹澹(たんたん)たる山島竦峙 山島 竦峙(しょうじ)たり樹木叢生 樹木 叢(むら)がり生じ百草豊茂 百草 豊かに茂る秋風蕭瑟 秋風 蕭瑟として洪波湧起…

巧言令色、鮮し仁

『論語』学而 子曰く、「巧言令色、鮮(すくな)し仁」と。 孔子は言われた、「巧みな言葉を用い、愛想良く表情を取り繕う者は、仁の心は少ない」と。 孔子の有名な言葉の一つです。 漢の包咸(ほうかん)の注によれば、「巧言」とは言葉を巧みに飾ること、「令…

隋宮の春

隋宮の春 杜牧龍舟東下事成空 龍舟 東に下るも 事 空(くう)と成る蔓草萋萋満故宮 蔓草(まんそう) 萋萋(せいせい)として 故宮に満つ亡国亡家為顔色 国を亡(ほろ)ぼし家を亡ぼすは 顔色が為なり露桃猶自恨春風 露桃 猶ほ自ら春風を恨む 煬帝は龍舟を浮かべて東…

白頭を悲しむ翁に代す

代悲白頭翁 白頭を悲しむ翁に代す 劉希夷 洛陽城東桃李花 洛陽の城東 桃李の花飛来飛去落誰家 飛び来たり飛び去りて 誰(た)が家にか落つ洛陽女児好顏色 洛陽の女児 顔色を好み坐見落花長歎息 坐(そぞ)ろに落花を見て 長く歎息す今年花落顏色改 今年 花落ちて…

独酌―白居易

独酌 白居易窓外正風雪 窓外 正に風雪擁炉開酒缸 炉を擁して 酒缸を開く何如釣船雨 何如(いかん)ぞ 釣船の雨篷底睡秋江 篷底 秋江に睡るに 窓の外はいまや吹雪。その音を聞きながら炉端で酒がめのふたを開く。この楽しさは、秋の川辺で雨音を聞きながら、釣…

江南の春

江南春 杜牧千里鶯啼緑映紅 千里 鶯 啼きて 緑 紅に映ず水村山郭酒旗風 水村 山郭 酒旗の風南朝四百八十寺 南朝 四百八十寺(しひゃくはっしんじ)多少楼台煙雨中 多少の楼台 煙雨の中(うち) 千里彼方まで鶯が鳴きしきり、緑の葉が紅の花に映えわたる。水辺の…

江雪―柳宗元

江雪 柳宗元千山鳥飛絶 千山 鳥飛ぶこと絶え万逕人蹤滅 万逕 人蹤滅す孤舟蓑笠翁 孤舟 蓑笠の翁独釣寒江雪 独り釣る 寒江の雪 連なる山々には鳥の飛ぶ姿も絶え、あらゆる小径には人の足跡も消えた。一艘の小舟に蓑笠をつけた翁が乗り、寒々とした雪の降る江…

茅屋 秋風の破る所と為る歌

茅屋為秋風所破歌 杜甫 茅屋 秋風の破る所と為る歌 八月秋高風怒号 八月 秋高くして 風 怒号し巻我屋上三重茅 我が屋上の三重の茅を巻く茅飛度江灑江郊 茅は飛びて江を度(わた)り 江 郊に灑(そそ)ぎ高者挂罥長林梢 高き者は長林の梢(こずえ)に挂罥(くゎいけ…

秋風の辞

秋風辞 漢武帝 秋風起兮白雲飛 秋風 起こりて 白雲 飛び草木黄落兮雁南帰 草木 黄落して 雁 南に帰る蘭有秀兮菊有芳 蘭に秀でたる有り 菊に芳しき有り懐佳人兮不能忘 佳人を懐(おも)ひて忘るる能はず泛楼舡兮済汾河 楼舡を泛(うか)べて 汾河(ふんが)を済(わ…

送別―王維

送別 王維下馬飲君酒 馬を下り 君に酒を飲ましむ問君何所之 君に問ふ 何の之(ゆ)く所ぞ君言不得意 君は言ふ 意を得ず帰臥南山陲 南山の陲(ほとり)に帰臥(きが)せんと但去莫復問 但だ去れ 復た問ふこと莫し白雲無尽時 白雲 尽くる時無からん 馬を下りて君に一…

一を聞いて二を知る

『論語』公冶長子 子貢に謂ひて曰く、「女(なんじ)と回と孰(いず)れか愈(まさ)れる」と。対(こた)へて曰く、「賜(し)や何ぞ敢へて回を望まん。回や一を聞いて以て十を知る。賜や一を聞いて以て二を知るのみ」と。子曰く、「如(し)かざるなり。吾と女(なんじ)…

夏昼偶作

夏昼偶作 柳宗元南州溽暑酔如酒 南州 の溽暑(じょくしょ) 酔ひて酒の如し隠几熟眠開北牖 几(き)に隠(よ)りて熟眠 北牖(ほくゆう)を開く日午独覚無余声 日午 独り覚めて 余声無し山童隔竹敲茶臼 山童 竹を隔てて 茶臼(ちゃきゅう)を敲(たた)く 南国のあまりの…

香山避暑

香山避暑 白居易 六月灘声如猛雨 六月 灘声(たんせい) 猛雨の如し 香山楼北暢師房 香山の楼北 暢師(ちょうし)の房 夜深起憑闌干立 夜深くして 起ちて闌干(らんかん)に憑りて立てば 満耳潺湲満面涼 耳に満つる潺湲(せんかん) 面に満つる涼 夏六月、岩にぶつか…

梅雨―杜甫

「梅雨」というのはもともと梅の実が熟する頃に降る雨ということで、中国でもあります。その梅雨を詠った杜甫の詩を一首。 梅雨 杜甫 南京犀浦道 南京 犀浦(さいほ)の道 四月熟黄梅 四月 黄梅 熟す 湛湛長江去 湛湛として 長江 去り 冥冥細雨来 冥冥として …

南史演義 巻4-10

桓玄は足の速い船に乗って、西のかた江陵へと敗走した。郭銓(かくせん)は陣前で劉毅(りゅうき)に降った。殷仲文(いんちゅうぶん)は、はじめ桓玄に従って逃走したが、道中で引き返し、巴陵(はりょう)で何皇后と王皇后を迎え、二皇后を奉じて都建康へ向かった…

南史演義 巻4-9

さて桓玄は尋陽(じんよう)に敗走したが、郭昶之(かくちょうし)が武器や兵力を支給したため、軍力を少し回復した。何無忌(かむき)、劉毅(りゅうき)、劉道規(りゅうどうき)の三将が追ってくるのを聞き、何澹之(かたんし)を留めて湓口(ほんこう)を守らせ、自身…

南史演義 巻4-8

壬申(じんしん)、群臣は劉裕を領揚州刺史に推挙したが、劉裕は王謐(おうひつ)の恩に感じており、この領揚州刺史をもってこれに酬いることにした。そこで劉裕を推挙して大将軍・都督揚徐袞予青冀幽并八州軍事とした。そして劉毅(りゅうき)を青州刺史とし、何…

南史演義 巻4-7

桓玄は二将の死を聞き、大いにおそれ、群臣に問うた。「わしは敗れるのか?」吏部郎の曹靖之(そうせいし)は答えて言った。「民は怨み、神は怒っております。臣はまことにそれを懼れております。」桓玄「民が怨むのはともかく、神はどうして怒っているのか?…

酒を把りて月に問ふ

把酒問月 酒を把(と)りて月に問ふ 李白青天有月来幾時 青天 月有りて来(このか)た幾時ぞ我今停杯一問之 我 今 杯を停めて一たび之に問ふ人攀明月不可得 人 明月を攀(よ)づるも得(う)べからず月行却与人相随 月行 却(かえ)って人と相ひ随ふ皎如飛鏡臨丹闕 皎…

南史演義 巻4-6

さて呉甫之(ごほし)は江乗(こうじょう)まで進軍し、そこで劉裕軍と相遇した。呉甫之の兵は劉裕軍の数倍あり、甲冑や騎馬が陣に連なり、矛や槍は日に照らされ輝いていた。劉裕の兵はそれを見てみな恐れたが、劉裕は言った。「今日の戦は、進むことはあっても…

南史演義 巻4-5

さて一方、この同じ日、孟昶(もうちょう)は青州にあり、桓宏(かんこう)に出猟するように勧め、その許可を得ていた。まだ夜が明けぬうちに門を開かせると、猟に出るはずの孟昶、劉毅(りゅうき)、劉道規(りゅうどうき)らは、壮士数十人を率い、間隙に乗じて突…

月下独酌

月下独酌 李白花間一壷酒 花間 一壺の酒独酌無相親 独り酌みて相ひ親しむ無し挙杯邀明月 杯を挙げて明月を邀(むか)へ対影成三人 影に対して三人と成る月既不解飲 月は既に飲むを解せず影徒随我身 影は徒らに我が身に随ふ暫伴月将影 暫く月と影とを伴にし行楽…